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なにそのツンデ霊☆四人目★

1 :本当にあった怖い名無し:2006/06/19(月) 23:17:37 ID:2ued6Dho0
怖い話に出てくる女幽霊は実はツンデレなのではないかという新説を
検証してみるスレッドです。

前スレ
なにそのツンデ霊★四人目★
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1145453459/
なにそのツンデ霊★三人目★
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1142094064/
なにそのツンデ霊★2人目
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1139653191/
なにそのツンデ霊www1人目 
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1131190956/
まとめサイト
http://www.tsunderei.org/

61 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:35:37 ID:pfa3+AAC0
ぐったりとした帰路。梅雨独特の、じっとりと暑い一日だった。
夜になっても不快指数は変わらず、身体がどろりと溶けそうになる。
安息を求め、アパートのドアを開けると、むわっとした熱気が溢れ出た。
──もう、どうでも良くなった。
早めに仕上げたいレポートがあったが後回しにする。今日はもう寝よう。

シャワーを浴びるのすら億劫。
入り口でシャツを脱ぎ、汗を拭って洗濯機に放り込む。
その場で倒れ込みたくなるのを堪え、奥へと脚を進める。

身体は休息を訴えるが、蒸し暑さが安眠を許しそうにない。
こういう時は、安眠剤(その他の雑種A)に頼るしかない。
夢遊病者のような足取りで冷蔵庫に向かい、ドアを開ける。
ひんやりとした冷気が心地好いが、所詮は気休めに過ぎない。
ろくに中も見ずに、手探りで冷えた缶を取り出そうとする。

──── むにゅん、

ひんやりとした──しかしアルミ缶とは違う、滑らかで柔らかな触感。
よく冷えた極上の葛餅のように、しっとりと指に吸い付く。

「…………はて?」
にゅん、にゅいん、にゅぃん、と手の中で形を変える不思議な葛餅。
決して厚みはないが、押せばどこまでも沈んでいきそうなほどに柔らかい。
暑さと疲れにやられた胡乱な頭で、状況を整理しようと試みる。
からから、と乾いた音を立て、脳みそが空回りをする。
そうして無駄な摩擦熱を発生させた後に辿り着いた結論は、

「────ほぅ」
“見て確かめる”、という原始的、しかし恐ろしく効果的な方法だった。
そして視認した“それ”は、およそ理解の範疇を越えたものだった。

62 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:37:10 ID:pfa3+AAC0
「────ほぅ」
知らず溜息が漏れた。

それはひどく非現実的で、ひどく幻想的で、ひどく……その、扱いに困った。
まるでレトロな伝奇浪漫小説──幻想小説のように曖昧で儚い泡沫。
だから、ついこの状況を、旧仮名遣いなどで表現したくなる。

      『 匣の中には綺麗な娘がぴつたり入つてゐた 』

狭い匣の中に、“みつしり”と詰まる、同い年の少女。
万年雪のように白い肌と、白い髪。そして紅く透き通るガラス玉のような瞳。
無表情に、何も言わず──ただじっと、凍える瞳で何かを訴えかける。

霞掛かる思考は過去へと遡り、子供の頃に作った雪兎の元へと辿り着く。
ビー玉の瞳の白い兎は、ただの一度も跳ねることなく、泥土へと還っていった。
取り残された二つの紅いガラス玉が、泥の上に転がっていた。
その後、大事にしまって置いたはずのそれも、いつ間にか無くしてしまった。

…………さて、回想さておき、現状を整理しよう。
『 匣(冷蔵庫)の中には綺麗な(見知らぬ)娘がぴつたり入つてゐた 』
以上。説明終わり。

「って納得できるか! 異議ありっ、弁護士を呼べっ!!」
「自首するの?」

ちりん、と風鈴のような透き通った声。頬の脇を涼風が通り抜けた。
まとわりつくような蒸し暑さが何処かへ消え、しん、と静寂と静謐さが訪れる。
相変わらず無表情で、静かにじっと見つめてくる紅いガラス玉のような瞳。
何も読み取れず、ただ沈黙が続くが、不思議と居心地の悪さはない。
むしろ、この時がいつまでも続けば良い──そうとさえ思わせる……

                ────それでも、雪はいつか溶けてしまう。

63 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:38:09 ID:pfa3+AAC0
「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」
再び凛と澄み渡る、玲瓏な響き……ただし、内容はどこかおかしい。

「──常習なら倍」
そう言うと彼女は、ついと視線を下げる。
流れ落ちた絹糸のような白髪が、はらり、と俺の腕をくすぐる。
つられて俺も視線を下げ──葛餅の正体を知った。

「……………………」
「……………………」
再び思考は永久凍土の奥へと沈降する。
ふにょん、と舌の上で溶けそうで、むにゅん、と唇の間で弾みそうなそれ。
雪原のわずかな膨らみ。早朝の新雪を犯す快感が指の間から溢れ出る。

「あ……その、これは……」
葛餅が吸い付いて離れない。──いや、離せない。
このまま黒蜜ときな粉を掛け、食べてしまいたい衝動に駆られる。──と、

「………… ぁ、」

──と、ほんのわずか、気のせいかもしれないが──恥ずかしそうな声。

我に返り、後ろの壁に張り付くように飛び退く。
右手が冷たい。顔が熱い。ようやく機能を再開した心臓が暴れ回る。
相変わらずの無表情、例のガラスの瞳で、じっと見つめてくる少女。
その視線に耐えきれなくなり、

「ご、ごめんっっ!」
慌ててドアを閉める。
閉まる直前、「電気を大切にね」と聞こえたのは空耳だろうか。

64 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:39:43 ID:pfa3+AAC0
さて、扉が閉まれば、いつもと変わらぬ1Kの安アパートが戻ってくる。
幻覚、白昼夢の類と思おうとしたが、右手に残る感触がそれを赦さない。
先程までのことを、現実離れした──しかし確かな現実だと理解したとたん、

「──ばっ、何やってるんだ俺!」
自分を叱責し、大慌ててで扉を開ける。
動転してたとは言え、人を冷蔵庫に閉じ込めるだなんて。


──かくして、匣入り娘は俺を批難するでもなく、こちらを見つめてくる。
物言わぬガラス玉の双眸の奥が、ゆらゆらと舐めるように揺らめく。
なお、冷蔵庫から出てくるつもりはないらしい。寒くないのだろうか。

「えっと……君、誰?」
聞きたいことは山ほどある。が、まずはこれを訊かねば始まらない。

「……ヒント1、『国境の長いトンネルを抜けると』?」
彼女は少しだけ視線を彷徨わせると、答えは出さず、問題を出してきた。

「えっと、川端康成の『雪国』?」
ノーベル賞作家の代表的な一節だ。さすがに間違えるはずがない。
──しかし、

「問題を間違えました」
「おい」
計算か天然か──前者ならば天才、後者ならば鬼才である。

65 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:40:49 ID:pfa3+AAC0
「わたし、雪女」
妙な引っ張りをした割りに、あっさりと言い放った。
あまりにもあっさりとしていたせいだろうか……聞き間違えてしてしまった。

「えっと……ジュディ・オング? ……あ、もしかして恩田有紀さん?」
しかし、先程の言葉が聞き間違いではないと否定される。
「違う、雪女」
だからさっきの問題は小泉八雲──ラフカディオ・ハーンが正解。
そんな言葉を付け加えた。

夏にも関わらず、雪を伴う冷たい北風が吹いた気がした。

……いや、本当は分かっていました。普通じゃないってくらい。
体温は全く無いし、瞳の色はカラーコンタクトとかで誤魔化せる物じゃないし。
それにしても雪女とは……ついこの間、夏至だったよね?
何となく、脳裏にジェットスキーで登場するサンタクロースの映像が流れた。

「えっと……雪女さんは、何でここにいるの?」
「…………」
「……どこかで会ったことあったっけ?
「………………」
「…………は、ははは、」
沈黙が苦しくて、乾いた笑い声を漏らす。
万年雪の沈黙。無回答。捉えどころがない、というよりも、取り付く島がない。
ひょっとしなくても──嫌われているのだろうか。

そりゃそうだろう、出会い頭に『葛餅』じゃ……、

「変態?」
はっとなり彼女の視線を追うと──何ともイヤらしく歪んだ右手がある。
「あ、いや、これは、その、」
しどろもどろに弁解を考えるが、彼女は興味なさげに見つめるだけ。

66 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:42:15 ID:CIgpxf9x0
wktk

67 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:42:36 ID:pfa3+AAC0
「閉めて」
「──へ?」
言葉が短いのと、自分が混乱していたのとで意味を取り逃す。
「暑いの、苦手」──だから閉めて、そう繰り返す。

……徹底的に嫌われたようだ。
非はこちらにある。素直に従おう。
「ごめん」
謝るが反応はない。ガラス玉が、早く閉めろと催促する。
もう一度、お詫びの言葉を伝え、扉を閉める。



奥の部屋には冷蔵庫の中身が積まれていた。
この暑さだ、肉類は全滅だろう。他の物も、このままではいずれ傷む。
新たな冷蔵庫を買うべきだろうか……

「ていうかアイツ、いつまで居る気だ?」
そもそも、なんでうちの冷蔵庫にいるのか、それすらも聞いていない。

「──ま、いっか」
とにかく疲れた。当初の予定通り、今日はもう寝よう。
布団に横になり目蓋を閉じる。同時に、すぐに意識も────、


   ────ガゴンガゴンドゴドガガゴンッ!!


「──て、敵襲ぅっっ!?」
眠気は一気に吹き飛び、布団から飛び起きる。

68 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:43:53 ID:pfa3+AAC0
音源はすぐに知れた。今もガコンガコンと、中身が暴れ回る音がする。
やっぱり、という得心と、まさか、という疑念が沸き起る。
冷たさすら感じさせる彼女の姿と、暴れ回る冷蔵庫の映像が一致しない。

一瞬、酸欠で苦しんでいるのかと思ったが、どうも様子が違う。
どちらかと言えば、中で小動物が喜びに悶えているような印象を受ける。

……それこそ、まさかである。
彼女が顔を赤らめ、悶え転げ回る映像を想像し、コンマ数秒で断念した。
そんなキャラではないし、そもそも理由がない。

──さて、状況は不明。
しかし、家主として、学問の徒として放っておく分けにはいくまい。
決して野次馬的、あるいは出歯亀的な好奇心ではないと付記しておく。


そろりそろりと近づいて行く。
暴れ続ける冷蔵庫。よくもまあ体力が続く物である。
と、感心している場合ではない。こういうのは勢いが肝心だ。

躊躇いは敵。扉に手を掛け、一気に解放する──!!

     「────あ、」
                  「…………へ?」

どちらがどちらの声だったのだろうか──“生神停止(刻が停まった)”

そして凍える刻の中で、確かに “それ” を視た。
──さて、これは如何なる “幻朧月睨(じょうだん)” なのだろうか。

69 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:45:37 ID:pfa3+AAC0

      『 匣の中には綺麗な娘がぴつたり入つてゐた 』

「何?」
一瞬にして、最初と変わらぬ硬く冷たい態度を取り戻す彼女。
「…………み、」
しかし、微かながら真っ白な頬に、先程までの興奮の色が残っている。

「……何?」
すぐに消えてしまったが、その残像が網膜に焼き付いている。
ぴょこぴょこと彼女の頭の上で動いていたそれは……

「……、さ、みみ……」
「違う」
相変わらずの冷静な態度を崩さない彼女。
ただし、紅い瞳が僅かに逸らされている。
そして、先程まで彼女の頭の上で飛び跳ねていたそれは──、

「……う、う、……う、うさ耳ぃぃっっ!?」

   『 匣の中には綺麗な “うさ耳” 娘がぴつたり入つてゐた 』

「うさ耳」
「分からない」
「うさ耳」
「知らない」
「……うさ耳、」
「小麦粉か何かだ」
この期に及んでも、頑として態度を崩さない。ある種の尊敬の念すら抱く。

「……耳、出てるよ」
「──嘘っ!?」

70 :本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 16:47:24 ID:pfa3+AAC0
「うん、嘘だよ」
頭のてっぺんを抑えたままの体勢で、きょとん、と固まる雪兎娘。
騙されたと分かり、その顔がみるみる瞳と同じ色に染まり────、

──ばたんっ!
現代の病、引き籠もりへとなってしまった。


〜その後の話〜

彼女は冷蔵庫に居座り続けている。
外は暑い、と相変わらず引き籠もりだ。
仕方なく食材用に新しいのを買うと、そちらに引っ越してきた。贅沢者め。

夏が過ぎ、秋も深まり、だいぶ涼しくなってきた。
もうじき紅葉も始まる。そうしたら、彼女を外に連れ出そうと思う。
そんな引き籠もり更生プロジェクトを考えつつ、彼女を見る。

「──何?」
例の紅いガラス玉のような瞳で見つめ返してくる。

彼女は相変わらず無表情で、態度もツンツンと冷たいものである。
変わったことと言えば、耳を隠すのを止めたこと。
不機嫌なときは、ぺたんと垂れ、驚いたときなどは、ぴん、と立つ。
そしてそれ以外の時は、基本的にぴょこぴょこと跳ね回っている。
まるで嬉しいときの子犬の尻尾のようだ。
よく分からないが、彼女は彼女なりに幸せなのだろう。

「……いや、何でもない。アイス食うか?」
「ハーゲンダッツ」
「ばーか。そんなのあるか」
そして俺はと言えば……まあ、それなりに幸せである。

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